泣けない、頼れないあなたへ。もしかして「サイレントベビー」だったのかもしれません

この記事の内容

ポリヴェーガル理論から見る心と体の深いつながり


「うちの子、あまり泣かなくて育てやすいんです」

そう話していたママが、ふとしたときにこぼした言葉が、ずっと心に残っています。

「でも、なんだか表情が少なくて、こっちを見ても笑ってくれないんです」

赤ちゃんが泣かないのは、育てやすい証拠?

それとも何かのサインかもしれない?

今日は「サイレントベビー」と呼ばれる赤ちゃんの状態について、ポリヴェーガル理論という神経の働きの視点から、やさしく解説していきます。



サイレントベビーってどんな赤ちゃん?


サイレントベビーとは、あまり泣かない、声を出さない、表情が乏しい赤ちゃんのことをいいます。



赤ちゃんは本来、泣いたり声を出したりすることで「助けて」「お腹すいたよ」「さびしいよ」と、まわりに信号を送ります。

ところがサイレントベビーは、それをあまりしない。

一見「手がかからない、いい子」に見えるかもしれません。



でも、もしかしたらその静けさは、「助けてもらえない」と感じた結果、泣くことをあきらめてしまったサインかもしれないのです。


泣くことを諦めてしまったサイレントベビーのイメージを、白黒の赤ちゃんの手の画像で表現


泣かないのは、いいことじゃないの?


赤ちゃんが泣かない=ストレスが少ない、というイメージを持つ方もいるかもしれません。


でも、そうとは限りません。

赤ちゃんは泣くことで自分の命を守っています。

「寒いよ」「抱っこしてほしいよ」「お腹がすいたよ」――そうやってまわりにSOSを出すのが本来の姿です。

その「泣くこと」をやめてしまうのは、泣いても応えてもらえない、声を出しても届かないという体験が積み重なったからかもしれません。



ポリヴェーガル理論とは? 心と体を守る「3つの神経システム」


ここで、少しだけ「ポリヴェーガル理論」のお話をします。

ポリヴェーガル理論とは、神経の働きを通して「安心」「恐怖」「絶望」など、私たちがどう感じてどう行動するかを説明する考え方です。

この理論では、私たちの自律神経は大きく分けて3つのモードに切り替わるとされています。

背側迷走神経モード(凍りつき・シャットダウン)

 → もうどうにもならない・・・と感じたとき、体と心を守るために「感覚を閉じてしまう」状態。

無気力、無反応、虚無感が出てくる。

腹側迷走神経モード(安心・つながり)

 → 安心できて、表情も柔らかく、他人と関わろうとする状態。

赤ちゃんが穏やかに目を合わせたり、にこっと笑ったりするのはこの状態。

交感神経モード(闘う・逃げる)

 → 不安や怒りを感じて、泣いたり、身体がこわばったりする。

何かから逃げようとするようなエネルギーがある状態。




サイレントベビーは「シャットダウン」している状態?


サイレントベビーは、ポリヴェーガル理論でいうところの背側迷走神経モードにいると考えられます。

泣いても助けてもらえない、怖い思いをしても理解してもらえない。

そんな体験を何度もすると、赤ちゃんは次第に「泣くこと」「感情を表現すること」をやめてしまいます。

まるで、「感じるとつらすぎるから、感じないようにしよう」と自分を守っているように。

これは、わがままでも性格でもなく、神経の仕組みによって起こる自然な反応なんです。



「あのときの私も、そうだったのかもしれない」


サイレントベビーの話をすると、「それ、私の子どもがそうだったかも」と思う方と同時に、「私自身も、そうだったのかも」と感じる方もいます。

  • 子どもの頃、感情を出すのが苦手だった
  • 泣いた記憶があまりない
  • 親に甘えたり、助けを求めるのが苦手だった
  • 無表情で「いい子」だと思われていた


それは、背側迷走神経モードにいる「サイレントな状態」の名残かもしれません。


このモードは、大人になっても続くことがあります。

たとえば、

  • いつも心が冷めていて、何も感じられない
  • 嬉しいことも、悲しいことも、どこか遠くで起こっているような感覚
  • 「生きてる」実感が持てない

それは、あなたが「感じないことで、自分を守ってきた証拠」かもしれません。
(関連記事:アダルトチルドレンの生きづらさはどこから来るの?~愛着と安心感の再構築~



大丈夫。神経は、癒すことができる


背側迷走神経モードに入った状態は、とてもつらいものです。

でも、それは「心が弱いから」ではありません。

むしろ、そうでもしないと生きてこられなかった、あなたの体と心が選んだ「最善の方法」だったのです。


そして、人との安全なつながりを感じられるようになると、神経は少しずつ回復していきます。


たとえば、

  • 安心できる人と、ゆっくり目を合わせること
  • 触れられても大丈夫、と思える感覚
  • 自分の気持ちを受け止めてもらう経験


そういった体験が、「今ここは安全なんだ」と脳と体が再学習していく助けになります。


今ここは安全なんだというイメージを、水辺で飲み物を飲んでいる女性の画像で表現


静けさの奥にある、赤ちゃんの声を聴く


サイレントベビーという言葉には、静かだけれども深い「叫び」が込められています。

その赤ちゃんが、大人になった今の自分だったとしたら――

あなたの中にも、ずっと泣きたかった「小さなあなた」がいるのかもしれません。

そして、今からでもその声に気づき、そっと寄り添っていくことはできます。

神経はやわらかく、そして正直です。


安全な関係の中で、ちゃんと変わっていける力を持っています。



もし、この記事を読んで「もしかして私も・・・」と感じたら


私のカウンセリングルームでは、ポリヴェーガル理論や神経の仕組みをベースにした安心できる関係性の中でのトラウマケアを行っています。

あなたのペースで、あなたの「感じたくても感じられなかった気持ち」に、ゆっくり触れていけるようサポートします。

泣いてもいい、頼ってもいい。

そのことを、あなたの心と体に少しずつ思い出してもらう時間になればと思っています。

興味のある方は、下のボタンからカウンセリングについてご覧くださいね。




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