人が怖いのはなぜ?トラウマがつくる「怖さ」とその正体
人が怖いと感じるその理由
「人と関わるのが怖い」
「人の目が気になって仕方がない」
「嫌われないかビクビクしてしまう」
こうした感覚に悩む人は少なくありません。
けれども、その「怖さ」の根っこにあるものが何なのかを知っている人は、実はあまり多くないのです。
この記事では、
・なぜ人が怖く感じるのか
・そこに隠れている神経系のメカニズム
・トラウマや過去の体験との関係
・そして回復のヒント
を、ポリヴェーガル理論やパーツ心理学を通して、やさしくひも解いていきます。
「人が怖い」は性格の問題じゃない
「もっと堂々としていたい」
「気にしすぎる性格を変えたい」
そう思えば思うほど、うまくできない自分にダメ出ししてしまう・・・
でも、ここでひとつ知っておいてほしいことがあります。
人が怖いという感覚は、あなたの性格ではなく、神経系がそう感じているだけだということです。
私たちの体は、安全を感じるとリラックスしたり、人と自然に関われたりします。
反対に、危険を感じると、無意識に緊張したり、相手の顔色をうかがったり、あるいは避けようとしたりします。
つまり「人が怖い」というのは、今この瞬間に“人”という存在を、神経系が“危険”だと認識している状態なんです。

ポリヴェーガル理論で見る「怖さ」の仕組み
ポリヴェーガル理論とは、自律神経の反応を通して人の心と体を理解する理論です。
この理論では、自律神経が3つの状態に分かれるとされています。
- 安全・つながりモード(腹側迷走神経)
- 戦う・逃げるモード(交感神経)
- シャットダウンモード(背側迷走神経)
「人が怖い」と感じているとき、私たちは多くの場合、交感神経優位(戦う・逃げる)か、背側迷走神経優位(凍りつき・無感覚)になっています。
たとえば、
・人前で緊張して汗が止まらない(交感神経)
・人と話すとフリーズしてしまう(背側迷走神経)
というように、体が“危険”に反応しているのです。
トラウマ体験と対人恐怖
では、なぜ「人」を“危険”だと感じてしまうのでしょうか?
そこに大きく関係しているのが、過去の対人関係のトラウマです。
・親に怒鳴られてばかりいた
・感情を無視された
・学校や職場でいじめを受けた
・話をちゃんと聴いてもらえなかった
・暴力や支配的な関係を経験した
こうした体験があると、脳や神経系は「人=危険」と学習してしまいます。
それは、今目の前にいる人がどんなに優しくても、関係なく反応してしまうこともあるのです。
だからこそ、自分ではどうしようもない「怖さ」が、心の奥から湧き上がってきてしまうのです。

「怖がっている自分」を責めないで
ここまで読んで、「やっぱり自分はダメだな」と思ってしまった方もいるかもしれません。
でも、どうか思い出してほしいのは、あなたが今感じている怖さは「あなたのせい」じゃないということ。
それは、過去に身を守るために身につけた、神経系の反応なのです。
むしろ、あなたの体は一生懸命あなたを守ろうとしてくれている。
「怖さ」を否定するのではなく、「今そう感じてるんだね」とやさしく見つめてあげること。
それが、回復への第一歩になります。
パーツ心理学:心の中にいる「怖がっている子」
パーツ心理学では、私たちの心には「いろんな部分(パーツ)」が存在すると考えます。
たとえば、
・人に気を遣いすぎてしまう自分
・優しくしたいけど、怖くてできない自分
・嫌われるくらいなら、最初から距離をとろうとする自分
こうした“分裂したような気持ち”も、実はそれぞれに理由があって、あなたを守るために存在しています。
中には、過去のつらい経験から「人が怖い」と強く信じている“幼いパーツ”もいるかもしれません。
その子は、過去の記憶に今も怯え続けているのです。
まずは「安心感」を育てることから
トラウマケアの基本は、「怖さに立ち向かうこと」ではありません。
安心・安全を感じられる時間や空間を増やすことです。
・深呼吸して体を落ち着かせる
・信頼できる人と一緒にいる
・自分の感覚に意識を向ける
・静かな音楽やぬくもりのある空間を感じる
こうした小さな「安心の経験」が、少しずつ神経系を書き換えていきます。
そして時間をかけて、「人=危険」という前提が緩んでくると、自然と人との距離感も変わっていきます。

あなたのペースで、ゆっくりと
「人が怖い」と感じるあなたは、とても繊細で、深く傷ついてきた人かもしれません。
でも、だからこそ、本当の意味での“つながり”や“安心”を知ることができる人でもあります。
回復は、誰かのペースに合わせるものではありません。
あなた自身の神経が、少しずつ整い、「人といても平気かも」「この人となら話せるかも」と感じられる瞬間を、一緒に増やしていけたらと願っています。

まとめ
・「人が怖い」は神経系の反応であって、性格の問題ではない
・ポリヴェーガル理論はその仕組みをやさしく説明してくれる
・過去の対人関係のトラウマが「人=危険」という学習をつくる
・怖がっている自分を責めず、「守ってくれている存在」として受け入れていく
・パーツ心理学では、心の中にいる“怖がっている子”と出会い、安心を育てる
・安心感は、自分の中にも育てることができる
あなたは、一人じゃありません。
怖くてもいい。緊張してもいい。
少しずつでも、自分のペースで“安心できる人間関係”を築けるようになります。
その一歩を、どうか大切にしてくださいね。
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