「頑張りすぎるアダルトチルドレン」 ― もう自分を追い込まなくていい理由
その「がんばり」は、誰のため?
「ちゃんとしなきゃ」「もっとやらないと」
そんな思いに突き動かされて、気がつけばいつも全力。
なのに、心はいつもどこか置き去りになっていませんか?
頑張っても評価されない。
人の倍頑張らないと認めてもらえない気がする。
少しでも手を抜くと、ダメな人間になってしまうような怖さがある。
そんなふうに感じている方は、「アダルトチルドレン」の傾向があるかもしれません。
これは決して“気の持ちよう”ではなく、脳や神経の働き、そして子ども時代の体験からくる深い影響なのです。
第1章:「頑張らないと価値がない」と感じてしまうのはなぜ?
■ 子ども時代の“条件つきの愛情”
アダルトチルドレンの多くが、「頑張ること=存在価値」と刷り込まれています。
たとえば、
- 成績が良いと褒められた
- 手伝いをすると親の機嫌がよくなった
- 泣いたり甘えたりすると拒絶された
こうした体験を繰り返すと、「私は役に立たないと価値がない」と無意識に学習してしまいます。
この刷り込みは、大人になってからも人間関係や仕事の場面で根強く残り、「常に全力」でいないと不安になる原因に。
■ ポリヴェーガル理論から見る“頑張りすぎ”の正体
ポリヴェーガル理論では、人の神経系は「安全」と感じている時に落ち着き、「危険」と感じると防衛反応が働くとされます。
この防衛反応には、闘う・逃げる・凍りつく(シャットダウン)という反応がありますが、頑張りすぎる人は「戦うモード」で生きていることが多いのです。
つまり、外から見ると一生懸命な人でも、内側では「見捨てられたくない」「価値を認めてもらいたい」という危機感が働いているのです。
第2章:頑張りすぎの影で疲れ切った“内なる子ども”
■ 「いい子」を演じ続けた小さな自分
パーツ心理学の視点では、私たちの中には様々な“内なる自分”が存在していると考えます。
頑張りすぎてしまう大人の中には、「怒られないように」「迷惑をかけないように」と小さな頃から“いい子”を演じてきたパーツがいることがよくあります。
このパーツは、今もあなたの中で「もっとやらなきゃ」と叫び続けているのかもしれません。
でも、本当はその子も、ただ安心したくて頑張っているだけなのです。
■ 頑張っても満たされない理由
「頑張っているのに報われない」
「頑張りが足りないのかも」と自分を責める・・・
このループにハマってしまうのは、「安心できる感覚」が体に根づいていないためです。
安心感のない土台の上に努力を重ねても、いつまで経っても“満たされる感覚”は得られません。
第3章:やさしく「戦闘モード」から抜け出すには
■ 頑張りを手放す第一歩は“緩める”こと
あなたの中にある「頑張りすぎ」の回路は、長年の習慣で強化されてきたもの。
でも脳には「可塑性(かそせい)」があり、新しい回路を育てることができます。
それが「安心」や「心地よさ」を感じる時間を少しずつ増やしていくことです。
■ すぐにできる神経系をゆるめる3つの方法
・「好きな香り」をほんの少し感じてみる
→アロマやハンドクリームなど、香りは脳に直接働きかけてリラックスを促します。
「好き」「心地いい」と思える香りを日常に取り入れて。
・動物の動画や自然の音にふれてみる
→赤ちゃんや動物、風の音や鳥の声など、安心感を呼び起こす刺激は神経系をゆるめる手助けに。
スマホで1分見るだけでもOK。
・「自分にやさしく触れる」時間をとる
→手を胸に当てて、あたたかさを感じるだけでも脳は安心します。
「よしよし」と自分をなでてあげるのも、効果的です。

第4章:本当の「自分らしさ」は、頑張らないところにある
■ “頑張らない自分”に価値を感じられますか?
「頑張らなくても、私は大丈夫」
そう感じられる瞬間が、あなたにはありますか?
多くのアダルトチルドレンにとって、それはとても難しいことです。
でも本当の意味で「自分らしさ」があらわれるのは、力を抜けたときです。
■ 自分にかける“ひとこと”を変えてみよう
何か失敗したとき、「私ってほんとダメ」と言いたくなるその瞬間に・・・
「そんな日もあるよね」「ここまでよくやったよ」と声をかけてみてください。
たったそれだけで、神経系は“安心ルート”を少しずつ思い出していきます。
第5章:回復のプロセス
Aさん(40代女性)は、いつも職場で人一倍働いていました。
体調が悪くても休めず、「役に立たないと価値がない」と感じていたからです。
カウンセリングの中で、「そんなふうに頑張らないと認めてもらえなかった子ども時代」があったことに気づきました。
そこから彼女は、「心地よい」と思える時間を日常に取り入れ、少しずつ“緊張の抜けた私”を取り戻していきました。
今では、「たまに頑張らなくても平気」と言えるようになったそうです。

カウンセリングでできること
当カウンセリングルームでは、アダルトチルドレンの方が持つ「頑張りすぎてしまう心」に寄り添いながら、専門的な視点でケアを行っています。
- ポリヴェーガル理論に基づいた安心感の育て方
- パーツ心理学を活用し、“頑張り屋のパーツ”をケア
- 過去の話を無理に掘り返さず、「今ここ」に焦点を当てたサポート
「もう頑張らなくていい」と、少しずつ自分の神経系に伝えていくお手伝いをいたします。
「頑張らなくても、あなたには価値がある」
頑張りすぎるのは、あなたが弱いからではありません。
むしろ、それほどまでに“愛されようとした”あなたの強さの証です。
でも、もう一人で頑張りすぎなくて大丈夫。
心と体に「安心」を取り戻していくことで、きっともっとやさしい生き方が見えてきます。
どうか、あなた自身にやさしくなってくださいね。
そしてもし、自分ひとりでは難しいと感じたら――
安心して、カウンセリングを頼ってください。あなたと一緒に歩む準備が、ここにあります。
もし長い記事が疲れるなと感じたら、エッセイカテゴリーに短めの文章もあります。
気軽に読める内容なので、ちょっとした息抜きにどうぞ。
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