「安心できない」と感じるあなたへ|トラウマ回復で見えてくる“小さな変化”とは?
トラウマからの回復で感じる“小さな変化”
「安心したいのに、どう感じたらいいのか分からないんです。」
カウンセリングの現場で、こんな言葉を聞くことは少なくありません。
そしてこれは、過去にトラウマ体験をしてきた方や、アダルトチルドレンとして育ってきた方の多くが抱える“共通の感覚”でもあります。
“安心”という感覚は、実はとても繊細で、そして人によっては長い間「よく分からないもの」になってしまうことがあります。
でも・・・
たとえ今はピンとこなくても、少しずつ、ほんの小さな変化から「安心」は戻ってくるのです。
この記事では、「安心ってそもそもどういう感覚なのか?」をやさしく紐解きながら、回復の中で見えてくる“小さなサイン”に目を向けてみたいと思います。
「安心」がわからなくなった理由
私たちが“安心”を感じられない背景には、いくつかの理由があります。
そのひとつが、幼少期からの「緊張の中での生き方」です。
たとえば、家庭の中で常に親の機嫌を気にしていたり、暴力や怒鳴り声が飛び交うような環境で育った場合、子どもの神経系は「常に警戒モード」に切り替わります。
本来、子どもにとって家庭は安心できる「安全基地」であるはずなのに、それが脅威や恐れのある場所だった場合、安心という感覚が育ちにくくなります。
その結果、大人になった今も、無意識のうちに体が緊張したままになっていたり、心がずっと「何か悪いことが起きるかも」と不安を抱えたままになっていることがあるのです。
このように「安心がわからない」のはあなたに問題があるのではなく、神経系が環境に適応してきた結果なのです。

ポリヴェーガル理論から見る「安心」と「警戒」
ここで少し、体と心の仕組みをやさしく見てみましょう。
私たちの体は、外の状況に応じて「安全モード」と「防御モード(闘争・逃走・凍りつき)」を自動的に切り替えるようにできています。
これを説明してくれるのが、「ポリヴェーガル理論」と呼ばれる神経理論です。
トラウマを抱えている人は、このモードの切り替えがうまくいかなくなり、「危険ではない場面でも、体がずっと防御モードのまま」になってしまうことがあります。
穏やかな場所にいても落ち着かない。
誰かにやさしくされても、警戒してしまう。
静かに過ごすはずの休日に、なぜかイライラや不安がこみ上げる。
こうした反応は、意志の力ではコントロールできない、体のシステムによるものなのです。
「小さな安心」はこんなふうに現れる
では、トラウマからの回復が始まるとき、どんな変化が起きるのでしょうか?
それは、ドラマチックな「癒し」ではなく、とても小さく気づかないようなサインとして現れることが多いです。
たとえば、こんな変化はありませんか?
- 気づいたら、呼吸が少しだけ深くなっていた
- 胸のあたりのつかえが、ほんの少しだけ軽くなった
- 頭の中の「自分責め」が、前よりも弱まっていた
- 「助けて」と言うのが、少しだけ怖くなくなった
- 誰かのやさしさを受け取ることができた
- いつもなら無理していたのに、「今日は休もう」と思えた
こうした変化は、パッと見ただけでは「癒された」とは感じにくいかもしれません。
でもこれは、あなたの中の神経系が、ほんの少しだけ「安全」の方向に動いた証なんです。
安心というのは、「こう感じなければいけない」ものではなく、人それぞれの中にあるとても個人的な体験です。
そして、それは回復のプロセスの中で少しずつ育っていくもの。

安心は「取り戻すもの」
トラウマや生きづらさから回復する道は、「自分を取り戻す道」でもあります。
そしてその中でも、「安心を感じる力」を取り戻すことは、とても大切な要素です。
私たちは、生まれたときから「安心を感じる力」を本来持っています。
ただ、それが何らかの経験によって薄れてしまっただけ。
だから今感じている不安や緊張も「壊れてしまった自分」ではなく、「がんばって生き延びてきた結果」なんだと捉えてほしいのです。
安心をもう一度感じるには、まずは小さな変化に気づくことから。
そこに意識を向けてあげるだけでも、神経系は「今はちょっと大丈夫かも」と感じてくれるのです。
あなたの中にも、安心を感じる力がある
「安心ってどんな感覚ですか?」
そう聞かれても、すぐに答えられないのは自然なことです。
でも、あなただけの“安心”は、確かにあなたの中に眠っています。
もしかしたら今は、小さな芽かもしれない。
でも、その芽は確実に育ち始めています。
焦らなくていい。
大きな変化じゃなくてもいい。
たったひとつ、小さな「ホッとする瞬間」があれば、それで十分。
あなたの中の安心は、ちゃんと生きてる。
そして、それを取り戻す旅を、あなたはもう始めているんです。

もし、あなたが「安心を取り戻したい」「もっと自分を理解したい」と感じているのなら、カウンセリングでサポートをさせていただきます。
あなたはひとりじゃないよ。
あなたが、自分らしく、穏やかに過ごせる毎日へ向かっていけますように。
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