「包まれる安心感」が心を癒す理由〜ブランケット症候群から見るトラウマと安全基地〜


この記事の内容

はじめに 〜なぜ「包まれる安心感」が大切なのか?


ふとした瞬間、毛布にくるまれてホッとしたり、柔らかいクッションを抱きしめて安心したことはありませんか?

それは単なる「気持ちいい」感覚以上の、心の深い部分に触れているサインかもしれません。

子どもがいつも手放さないお気に入りの毛布やぬいぐるみ。

それを「ブランケット症候群」と呼ぶことがありますが、実はこの行動、子どもにとってだけでなく、トラウマや不安を抱える大人にとっても、ヒントになるものなのです。

今回は、「包まれる安心感」がどれほど心にとって重要か、そしてそれが安全基地やバウンダリーとどう関係しているのかを、心理学の視点から優しく紐解いていきます。

ぬいぐるみの画像で安心感を表現


ブランケット症候群とは?


「ブランケット症候群(ブランケット・セキュリティ)」は、主に幼い子どもが特定の毛布やぬいぐるみなどを手放せず、強い愛着を示す状態のことを指します。

たとえば、お出かけにも一緒に持って行きたがったり、眠るときは必ずそれがないと眠れない…そんな様子、見たことがある方も多いかもしれません。

この行動は、「移行対象(トランジショナル・オブジェクト)」と呼ばれ、母親(または養育者)から自立し始める過程で、安心を感じる“中間的な存在”として機能します。

つまり、「この毛布があればママがいなくても安心できる」と、子ども自身が心の中に“安心の代わり”を作っていくわけです。

実は私自身も、子供の頃ブランケット症候群でした。


めったに洗わないクタクタになったタオルケットが手放せず、クタクタの柔らかい肌触りを感じている時はホッとできました。


今思えば、それは不安な気持ちを落ち着けるための”心の支え”だったのだと思います。


私のブランケット症候群は、中学生になる前くらいまで続き、その後自然となくなりました。


大人になるとブランケットそのものは手放しても、その代わりとなる「安心できるもの」は私たちの無意識の中に残り続けます。

それが特定の服や香り、空間、人とのつながりとなって現れることもあります。



「安心感」がもたらす心の安定


トラウマを抱えた人にとって、「安心できる状態」はとても大切でありながら、実は感じにくいものでもあります。

ポリヴェーガル理論によると、人の神経系は常に「安心(社会的関与)」「戦う/逃げる(交感神経)」「シャットダウン(背側迷走神経)」のどれかに反応しています。
【ポリヴェーガル理論についてはこちら


トラウマによって、常に危険を感じている状態が続くと、心も身体も慢性的に緊張し、「安全」や「安心」を感じる余地がなくなってしまうのです。


だからこそ、「包まれる感覚」や「ぬくもり」によって、少しずつ神経系が「今は大丈夫」と感じていくことが、トラウマの回復にはとても重要なのです。

包まれる感覚やぬくもりをぬいぐるみで表現


包まれるという感覚が与える心理的効果


毛布にくるまれる、ぬいぐるみを抱きしめる、お風呂に浸かる。

これらに共通しているのは、「五感で感じる安心感」です。

特に、肌への圧(ディープ・プレッシャー)や、心地よい重み、やわらかさ、好きな香りなどは、自律神経を整え、心を落ち着かせる働きがあります。

ソマティック(身体志向)の心理療法でも、身体に安心を感じさせることから始めるアプローチが多く取られます。
【ソマティック心理学についてはこちら


外の世界がどんなに不安定でも、自分の内側に「安心できるスペース」があることは、心の回復にとって、とても大切なのです。


バウンダリーと安全基地


「包まれる感覚」は、心理的な“境界線=バウンダリー”とも深く関係しています。

安心できる毛布は、「ここからここまでは自分の安心空間」という感覚をくれるもの。

それは他者との関係でも同じで、「ここまではOK、ここからはNO」と自分で決めることができると、人は安心して関われるようになります。

逆にバウンダリーが曖昧だと、相手に合わせすぎたり、自分の安心を後回しにしてしまいがち。

それは、常に誰かに包まれていたい、守ってほしいという気持ちが満たされていないサインかもしれません。

バウンダリーを育てるとは、自分の「安心できるスペース」を守り育てること。

それはまさに、心の中に毛布を持つようなものなのです。


安心できるスペースを毛布に包まれた猫で表現


大人の“安心毛布”を見つけよう


大人になっても、「これがあると安心する」「ここにいると落ち着く」と感じるもの、きっとあるはずです。

・お気に入りのカフェ

・いつも着るあたたかな服

・香りのついたルームスプレー

・信頼できる誰かの言葉やまなざし


それらは、外側からのサポートであると同時に、自分自身の内側に「安心」を育てる力でもあります。

そしてそれは、決して“甘え”ではなく、「自己調整」という心のスキルなのです。

安心できるスペースをイメージして、白い部屋に本と飲み物がある画像



まとめ 〜安心感が心を育てる土壌になる


トラウマを抱えた心には、まず「安全」「安心」という土壌が必要です。

それがあるからこそ、人は挑戦できたり、痛みに触れても回復できたりするのです。

ブランケット症候群が教えてくれるのは、「安心できる場所があることの強さ」


そしてそれは、毛布でなくても、今のあなたが選び取れるものでもあります。

あなたにとっての“ブランケット”は、何ですか?

その存在を、どうか大切に育ててあげてください。




もし、あなたが「安心できる場所が欲しい」「本当の自分を抱きしめてあげたい」と感じているのなら、どうかひとりで抱えこまないでください。

当カウンセリングルームでは、安心・安全の土台を丁寧に築きながら、あなたのペースで心をほどいていくサポートをしています。

ブランケットのように、あたたかく包まれる感覚を、あなた自身の中にも育てていきましょう。

心の安全基地を一緒に探していきませんか?


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