トラウマ克服の第一歩は「心地よさ」を感じることから始まる
トラウマ克服のために、まずは「心地よさ」を取り戻す
「トラウマを克服するには、過去を深く掘り下げなきゃいけない」と思っていませんか?
実は、いきなり過去に向き合うことが正解とは限りません。むしろ、その前に大切なステップがあります。
それは、“心地よさを取り戻すこと”。
トラウマを抱えている人の多くは、心も体もずっと緊張状態が続いています。
まずはそこに気づき、今この瞬間に「少しでもホッとする」時間を持つことが、すべての第一歩です。
扁桃体があなたを守ってくれている
トラウマを抱えている人は、脳の「扁桃体(へんとうたい)」が常に過敏になっています。
扁桃体は危険を察知するセンサーのような働きをする場所で、本来は私たちを守ってくれる存在です。
でも、機能不全の家庭や安心できない環境で育った場合、そのセンサーが「常にオン」になってしまいます。
安全なのに危険と感じてしまったり、人との関わりに緊張してしまったり。
これはあなたの意思の問題ではありません。
脳と神経の“仕組み”なのです。
扁桃体を落ち着かせる方法とは?
では、過敏になっている扁桃体をどう落ち着かせたらよいのでしょうか?
いくつかの方法が研究や実践の中で知られています。
- 深い呼吸
- 瞑想・マインドフルネス
- 五感を意識する
- ゆったりした運動(散歩・ヨガなど)
- 人との安心できる交流
- ホッとする時間をつくる
どれも「今ここ」に意識を向けることで、体に安全を伝える方法です。

「呼吸や瞑想ができない私」はおかしくない
とはいえ、これらの方法の中には「怖くてできない」「やってみても不安になる」という方もいます。
特に、深い呼吸や瞑想。
「リラックスする方法」として紹介されがちですが、トラウマの深い方にとっては逆に「自分の内側を感じるのが怖い」と感じてしまうことがあります。
それはあなたが弱いわけでも、努力が足りないわけでもありません。
これまで必死で生き延びるために、呼吸を浅くして思考を忙しくしてきた。
そんなあなたの体と心の“戦略”なのです。
小さな「心地よさ」を感じる練習
では、どうしたらいいのか?
いきなり深呼吸や瞑想をしなくても大丈夫。
もっとハードルの低い、「ちょっと心地いい」を感じる時間を日常の中につくるところから始めてみましょう。
たとえば、
- お茶をゆっくり味わって飲む
→ 香りや温度、器の感触に意識を向ける
→ お茶が喉を通り、胃に入るまでを感じてみる - 好きな動物の動画を見る
→ クスッと笑える、思わず顔がゆるむ
→ 脳が「安全」や「喜び」を感じる
これらはとてもシンプルですが、扁桃体にとっては大きな「安全のサイン」なのです。

神経系が安心を覚えると、心も変わっていく
こういった小さな「心地よさ」を積み重ねることで、少しずつ神経系が「大丈夫かも」と学習していきます。
すると、自然と過去に向き合う土台も整ってきます。
無理に前向きになる必要も、過去を思い出す必要も、最初はありません。
まずは「今ここで安心できる経験」を少しずつ重ねていくこと。
それがトラウマ克服の第一歩になります。
トラウマ克服に必要なのは順番
トラウマの回復には、順序があります。
いきなり「前向きな言葉」を投げかけても、体が緊張していれば心には届きません。
- まずは体を落ち着かせる
- 安全なつながりの中で安心感を育てる
- その上で、過去の痛みにやさしく向き合う
これが自然な流れです。
「頑張って前に進まなきゃ」と焦る必要はありません。
あなたのペースで、安心を取り戻していこう
私たちの神経系は、安心できる体験を通して少しずつ変わっていきます。
トラウマ克服は決して「根性」や「気合」で乗り越えるものではなく、日々の中の小さな安心や心地よさの積み重ねで築かれていくもの。
あなたの中には、回復する力がちゃんとあります。
でもそれを思い出すには、安心できる関係性と、やさしく見守る視点が必要です。
カウンセリングで、一緒にその第一歩を
「トラウマをどうにかしたい」「でも何から始めていいかわからない」
そんなあなたのために、カウンセリングでは無理なく、あなたのペースでできるステップをご提案しています。
何を話してもいいし、話さなくてもいい。
まずは安心できる関係性の中で、「心地よさを感じられる自分」に戻ることから始めませんか?
あなたの中にある、回復の力を一緒に育てていきましょう。
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気軽に読める内容なので、ちょっとした息抜きにどうぞ。
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