怒りは意志でどうにもならない――その理由と脳の仕組みをやさしく解説
怒りを「意志」で抑えられなかったあなたへ
怒りが込み上げてきて、つい大きな声を出してしまった。
あとから「あんなふうに怒るつもりじゃなかったのに」と後悔する。
それでも同じことを繰り返してしまう。
「なんで私は怒りを我慢できないの?」
「感情をコントロールできない私はダメなんじゃないか」
そんなふうに自分を責めてしまっていませんか?
でもそれは、あなたの意志が弱いせいでも、性格のせいでもないんです。
怒りをコントロールできないのは「脳と体」の仕組みの問題。
つまり「我慢しよう」とがんばるよりも、まずは仕組みを知って、安心を育てることの方がずっと効果的なんです。
(関連記事:怒りの正体を知ると、人生は変わりはじめる ― 感情の奥にある本当の声とは?)
アンガーマネジメントでは解決しない理由
「アンガーマネジメント」
怒りをうまく扱うための方法として広く知られています。
例えば、
- 怒りが湧いたら6秒待つ
- 自分の怒りを数値化してみる
- 怒りのトリガー(引き金)を知る
- 気持ちの伝え方を変える
- リフレッシュ方法を見つける
確かに有効な場合もありますが、うまくいかないことも多いのが現実です。
とくに「6秒我慢する」という方法――
実際には「その6秒がどうしても我慢できない」という悩みが一番多いのです。
なぜなら、
怒りは意思で抑えられるものではなく、身体の反応だからです。
怒りは「脳」が勝手に起こす防御反応
怒りが突然わき起こるとき、脳の中で何が起きているのでしょうか。
キーワードは「扁桃体(へんとうたい)」という脳の一部です。
扁桃体は「感情」を処理する場所で、特に「恐怖・不安・怒り」に強く反応します。
扁桃体は、命の危険を察知したとき、0.1秒のスピードで「闘うか逃げるか」を判断してくれます。
つまり、怒りは「自分の身を守るための反応」でもあるんです。
幼少期の安心感の不足が影響していることも
実は、扁桃体の働きは、育った環境の影響を強く受けます。
例えば、
- 家庭内がいつもピリピリしていた
- 親がすぐ怒鳴る・無視する
- 愛情表現がほとんどなかった
こうした環境で育った人は、扁桃体が過剰に反応するクセがついてしまいます。
常に「危険かも」と身構えるような状態が続き、大人になっても「怒り」という形で反応してしまうのです。
冷静な判断をする脳のブレーキが効かない理由
怒りのブレーキ役となるのが「前頭前野(ぜんとうぜんや)」という脳の部分です。
前頭前野の働き
①意思決定・判断力
②感情のコントロール
③計画・目標設定
④注意力・集中力の維持
⑤創造性・問題解決能力
⑥社会性・コミュニケーション能力
この前頭前野がきちんと働いていれば、「今、本当に怒るべきなの?」と一呼吸置くことができます。
でもストレスが多すぎる状態や扁桃体の暴走が続くと、前頭前野の働きが弱まりうまくブレーキがかかりません。
これが、「怒りを我慢できない」の真相なのです。

前頭前野を元気にする5つの方法
怒りを根本から穏やかにするには、前頭前野の働きを整えてあげることが大切です。
効果的な方法はこちら、
前頭前野の働きを活発化させる方法
①読書や学びの時間をつくる
②散歩や軽い運動をする
③深呼吸や瞑想を日常に取り入れる
④信頼できる人との交流をもつ
⑤「安心感」のある環境に身を置く
でも、ここで大切なことがあります。
それは、どんな方法も「安心感」という土台がなければうまくいかないということです。
「安心感」は人とのつながりの中で育つ
私たちは、哺乳類という「つながり」を求める生き物です。
知らない人であっても、ふと目が合ったときに笑顔を返してもらえると、ホッとしたり、少し心が緩んだりしますよね。
これは、脳が「安全だ」と判断している証拠。
安心感は、頭で考えるものではなく、「体で感じる」ものです。
怒りを抑えるより、安心を育てよう
怒りを意志で抑えようとしてもうまくいかないとき、「またやってしまった」と落ち込むのではなく、「体が守ろうとしてくれたんだな」と少しだけ優しく受け止めてあげてください。
そして、体と心に「安心していいよ」と伝えてあげること。
それが、怒りをコントロールできる状態を作る、一番の近道です。

怒りと優しく向き合いたいあなたへ
もしあなたが、怒りに悩んできたけれど「我慢する」や「考え方を変える」ではうまくいかなかったなら、「体」や「神経」にアプローチする新しい選択肢を取り入れてみませんか?
当カウンセリングルームでは、ただ話を聴くだけでなく、安心を体で感じられるようにサポートしていきます。
トラウマや過去のつらい経験で固まってしまった心と体を、少しずつ緩めていくプロセスを一緒に歩んでいきましょう。
一人でがんばらなくても大丈夫。
あなたが「もう怒らなくても大丈夫」と思える日がくるように、丁寧に寄り添います。
もし長い記事が疲れるなと感じたら、エッセイカテゴリーに短めの文章もあります。
気軽に読める内容なので、ちょっとした息抜きにどうぞ。
あなたの心が軽くなる一言が見つかるかもしれません。エッセイはこちら