「人に甘えられない私」は悪くない:トラウマと自律神経から読み解く心の仕組み
「人に甘えられない」は性格ではない
「人に弱音を吐けない」「誰かに頼るのが怖い」
このような悩みを抱えている方は少なくありません。
そして多くの人が「自分の性格だから仕方ない」と思い込み、自分を責めています。
ですが実際には、その背景には過去の体験や心の仕組みが深く関係しています。
本記事では私自身の体験を交えながら、トラウマ・ポリヴェーガル理論・パーツ心理学という3つの視点で「人に甘えられない」心の仕組みをわかりやすく解説します。
第1章:幼少期の体験と「甘えられない自分」の起源
私の子ども時代、家庭は常に緊張状態にありました。
父の威圧的な態度に怯える日々。
私にとって家は安心できる場所ではなく、いつしか「私が母を守らなければならない」という感情が生まれました。
実際には、子どもの私にできることは限られており、ただ一緒に泣くしかありませんでした。
そこから私は「母を守れなかった=無力な自分」「無力な私は価値がない」という思い込みを深く心に刻んでしまいました。

第2章:無意識の防衛反応としての信念形成
人間の心は、過酷な状況を生き抜くために「防衛的な信念」を作り出します。
私の場合、「人に頼らない」「人に甘えない」「常に強くある」という信念が形成され、それによって自分を守ってきました。
これらはすべて、自分を傷つける環境の中で生き延びるための「適応戦略」だったのです。
第3章:ポリヴェーガル理論が示す心と体のつながり
ポリヴェーガル理論によれば、人間の神経系は危険を感知すると、「闘争・逃走(交感神経)」「凍りつき(背側迷走神経)」といった防衛反応を自動的に起こします。
家庭内の緊張は、私の神経系に「安全ではない」と信号を送り続けていたため、常に緊張・警戒モード(交感神経優位)にありました。
これにより「甘える=無防備=危険」と無意識に学習し、それが大人になっても継続してしまうのです。
第4章:パーツ心理学で見る「甘えられない自分」の内側
パーツ心理学では、人の内面には複数の「部分(パーツ)」が存在し、それぞれが独自の役割や感情を持つと考えます。
「甘えたい」と思う部分もあれば、「甘えてはいけない」と制限する部分も存在します。
私の中にも「母を守ろうとする子どものパーツ」や、「無価値感を感じるパーツ」、「強くあらねばならないと頑張るパーツ」が共存していました。
これらはすべて、過去の環境に適応するために必要だった存在です。
問題は、これらのパーツが今の現実でも過去のルールを適用し続けている点にあります。
第5章:「自分のせいじゃない」と理解することから始まる
こうした信念は、あなたの「意志の弱さ」や「性格のせい」ではありません。
すべては、過去の体験と心身の適応によるものです。
まず大切なのは、「これらは自分のせいではなかった」と知ること。
そして、「今の自分には違う選択肢がある」と気づくことです。

第6章:信念を書き換えるためにできること
刷り込まれた信念を変えるには、まず「気づき」が不可欠です。
そして、ポリヴェーガル理論やパーツ心理学の知識を活かして、自分の心と身体の反応を丁寧に観察していくことが鍵になります。
- 緊張を感じたときは、安全な場所や人を見つける
- 「甘えたい」と感じるパーツを責めずに受け入れる
- 信頼できるカウンセラーと共にワークを進める
これらを通して、少しずつ信念は変化していきます。
誰でもいつからでも変われる
信念の書き換えは一朝一夕ではなく、丁寧なプロセスが必要です。
しかしそれは確実に可能です。
なぜなら、私自身がそうであったように、人の心は「癒される力」を本来備えているからです。
「甘えられない自分」に悩んでいるあなたへ。
それは過去を生き抜くために必要だった姿です。
今、少しずつでも「甘えていい」「頼っていい」と思えるように自分を許していくことが、あなたの本当の自由への第一歩となるでしょう。
「人に甘えられない」「頼れない」そんなあなたの背景には、ちゃんと理由があります。
それはあなたが“弱い”からではなく、“守るためにがんばってきた”証。
でも、もうひとりで抱え続けなくても大丈夫です。

もし、あなたの中の小さな声に耳を傾けてくれる誰かを探しているなら、私はあなたと一緒にその声を聴きながらやさしくほどいていくお手伝いができます。
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