「ゴロゴロできない私」を卒業するまで~ポリヴェーガル理論とパーツ心理学でひも解くアダルトチルドレンの緊張の正体〜
リラックスが「罪悪感」になる人へ
「休みの日くらい、家でゴロゴロしたい」
ただそれだけのことなのに、なぜか落ち着かない。
罪悪感、ソワソワ、不安・・・
そんな気持ちがどこから来るのか、あなたは知っていますか?
これは「気合い」でどうにかできる話ではなく、実は脳と神経のシステムの問題なのです。
この記事では、アダルトチルドレンの私が「なぜゴロゴロできなかったのか」、そしてどうやって「安心してリラックスできる自分」になっていったのかを、ポリヴェーガル理論・ソマティック心理学・パーツ心理学の視点で解説していきます。
「家では寛げない」子ども時代の記憶
私には、幼少期に「安心して寛いだ記憶」がほとんどありません。
もしかしたら、本当は寛げた瞬間もあったのかもしれない。
でも、それ以上に緊張していた記憶のインパクトが強すぎたのです。
たとえば、休日に家でゴロゴロしていたら父から言われた言葉――
「いい若いもんが怠けている!」
こんなふうに怒られる体験を何度も重ねるうちに、「家でゴロゴロ=悪いこと」という無意識のルールが刷り込まれていきました。
ポリヴェーガル理論で見る「緊張が抜けない理由」
この無意識の緊張には、ポリヴェーガル理論が深く関わっています。
ポリヴェーガル理論では、私たちの神経は主に3つのモードに分かれているとされています。
- 社会的交流モード(安全・安心)
- 交感神経モード(戦う・逃げる)
- 背側迷走神経モード(シャットダウン・フリーズ)
子ども時代、怒られたり、緊張した家庭環境で長く過ごすと、私たちは「安全・安心」の状態(社会的交流モード)をあまり経験できません。
代わりに、「常に緊張・警戒している交感神経モード」で生きるクセがつくのです。
その状態が長く続くと、大人になってもリラックスすること=危険と脳が誤認してしまいます。
だから私は、誰も怒る人がいなくなった後でも、ゴロゴロできなかったのです。

ソマティック心理学が教えてくれる「体が覚えていること」
ソマティック心理学では、「心と体はひとつ」と考えます。
つまり、過去の体験によって、体そのものが反応を記憶しているということ。
「もう怒る人はいないから大丈夫」と頭で理解していても、体は過去の緊張状態を記憶していて、リラックスしようとするとソワソワしてしまう。
これがまさに、私が経験した「横になっても落ち着かず、結局起き上がる」パターンでした。
体は、安心の経験を通してしか“安心していい”ことを学べないのです。
パーツ心理学で見えてきた「私の中の反発と罪悪感」
さらに、パーツ心理学の考え方も、私の理解を深めてくれました。
パーツ心理学では、「私たちの心にはいろんな“部分(パーツ)”が存在している」と捉えます。
たとえば──
- ゴロゴロしたい私
- でもそれを「ダメ」と言う声
- 父に反発したいけど、怖くてできなかった小さな私
こうした複数のパーツが内側でせめぎあっている状態だったのです。
実際、横になっても「ほんとにこのままでいいの?」「だらしないよ」という声が頭に響いてきて、体が休むことを許してくれませんでした。
「なぜ休めないのか」がわかると、体も少しずつ変わる
でも、これらの理論を学び、「ああ、これは私の意思が弱いんじゃなくて、神経と体と心の仕組みだったんだ」と腑に落ちたとき、私は初めて自分に優しくなれたのです。
「休めない私」はダメなんじゃない。
ずっと休まず頑張ってきた、ただの健気な私のパーツだったんだ。
そう思えるようになったとき、私は自分の内側に少しずつ「安心感」が広がるのを感じました。
少しずつ、ゴロゴロする練習をはじめた
私は意識して「ゴロゴロする時間」を作るようにしました。
最初は、ほんの5分だけ。
それでも落ち着かないこともありました。
でも、「大丈夫だよ、今は安全だよ」と自分に語りかけながら、体を緩める練習をしたのです。
そして今では、ゴロゴロできる時間が、とても幸せな時間になりました。

ゴロゴロできるようになった心の変化
ゴロゴロできるようになったのは、単なる習慣の変化ではありませんでした。それは、自分の心が少しずつ「安心感」を感じるようになった結果なのです。
初めは、ゴロゴロすることに対して強い抵抗がありました。心の中では「怠けている」とか「何かをしなくては」といった声が聞こえ、体はリラックスしようとする自分を許しませんでした。
しかし、少しずつその気持ちに向き合うことで、心の中の変化が始まりました。
まず、意識的に自分に「今、何もしなくていいんだよ」と声をかけることから始めました。
最初は、その声が心の中で響いても、体はまだ緊張していました。
でも、少しずつその「安心できる時間」を意図的に作ることで、心の中の葛藤が少しずつ解けていきました。
さらに、ゴロゴロしているときの自分を責める声が少なくなり、逆に「ゴロゴロしている自分を大切にしてあげよう」と思えるようになったのです。
無理に動かなければならないというプレッシャーを自分にかけず、ただ「ここで休んでいい」と許可を出すことができました。
その瞬間、身体が少しずつリラックスし、心が温かくなるような感覚を覚えました。
心の中で何かが解ける音が聞こえるような、そんな感覚です。
ゴロゴロしていることを楽しむということは、ただ体を休めるだけではなく、過去の自分に「大丈夫、あなたはもう責められない」というメッセージを送ることでもありました。
そのメッセージが心に届くたびに、少しずつ過去の制限から解放されていくように感じました。
そして、ある日気づいたのです。
ゴロゴロできる自分を許せた瞬間、私は本当の意味で過去の呪縛から解放されたのだと。
自分に優しくすることが、ただの「怠け」ではなく、自分を大切にすることだということを理解できたのです。
この心の変化が、ただ「ゴロゴロできる」というシンプルな行為に深い意味を持たせてくれました。
そして今では、この時間が私にとってとても貴重で、心が満たされる瞬間となっています。
「当たり前じゃなかったこと」を喜べる力
ゴロゴロできること。
何もせず、ただ安心していられること。
それは、もしかしたら「当たり前」のように思えるかもしれません。
でも私にとっては、それは「奇跡」のような時間です。
幼少期、あまりにも制限が多かったからこそ、今こうして自由に過ごせることが、ものすごく有難いのです。
この「喜びを深く味わえる力」こそが、アダルトチルドレンが持っているスキルではないかと私は思っています。

幸せを感じるスキルは、誰の中にもある
「リラックスできないのは、あなたのせいじゃない」
それは神経のクセであり、体の記憶であり、無意識のルールのせい。
そして、それは書き換えることができるのです。
ポリヴェーガル理論やソマティック心理学、パーツ心理学の視点からアプローチすれば、あなたも少しずつ、体と心の緊張から解放されていきます。
そのスキルを活かせる環境を、一緒に
アダルトチルドレンは、制限の多い環境で育ったからこそ、小さな幸せを深く味わえる力を持っています。
でもその力を発揮するには、「安心できる環境」が必要です。
ひとりでは難しいこともあるけど、あなたの中にすでにある「幸せを感じる力」を、いっしょに引き出していきませんか?
その最初の一歩を、私はカウンセリングでサポートしています。
少ない文字数でサクッと読めるエッセイはこちら