トラウマによる解離から心と体を取り戻す ─ 安心感を育てて「今ここ」に戻る方法
トラウマによる解離状態から、感覚を取り戻していくために
「何を感じているのか、自分でもよくわからない」「泣きたいのに涙が出ない」「うれしいはずなのに心が動かない」──そんな経験はありませんか?
心のどこかに蓋をして、感じないようにしてきた。
でも、それは「自分が壊れたから」ではなく、「そうしないと生き延びられなかったから」なんです。
このページでは、トラウマによって引き起こされる「解離」という心の防衛反応について、やさしく、そして具体的にお伝えしていきます。
解離は恥ずかしいことではありません。むしろ、それはあなたが必死に生き抜いてきた証拠なのです。
トラウマと解離 ― なぜ心と体が切り離されるのか
強いストレスや心の傷に直面したとき、私たちの脳と体は「これ以上つらさを感じないように」と自動的に防衛反応を起こします。
そのひとつが「解離(かいり)」です。
解離とは、心と体の感覚が切り離されてしまう状態。感情が鈍くなったり、体の痛みを感じにくくなったりするのが特徴です。
これは決しておかしなことではなく、脳が「もうこれ以上耐えられない」と判断した時に起こる、とても自然な現象です。
解離が起きると、脳内で「内因性オピオイド」という天然の鎮痛物質が分泌され、痛みや感覚を麻痺させます。これはいわば「心の麻酔」のようなもの。トラウマに耐えるために、心と体を切り離して命を守ってくれていたのです。
解離によって起こる心と体のズレ
解離が続いていると、さまざまなズレが起こります。
- 疲れていても「疲れた」と感じない
- 痛いのに「痛み」に気づかない
- 楽しいはずのことも「心が動かない」
- 無理していることにも気づかず、限界を超えてしまう
たとえば、仕事をしすぎて倒れたあとに「全然平気だと思っていたのに」と驚く方もいます。
これは、体の声が脳に届いていないからです。
日常生活で「自分を無視してしまう」癖が、実は解離による感覚の遮断と関係していることも多いのです。

「今ここ」を取り戻すということ
心と体を再びつなぐには、「今ここ」に意識を向けることが鍵になります。
これはマインドフルネスやソマティックな実践(体の感覚に意識を向けるワーク)で回復可能です。
・今、どんな姿勢で座っている?
・呼吸の速さは?
・足の裏は地面を感じてる?
こうした五感への意識を高めることで、切り離された感覚が少しずつ戻ってきます。
焦らず、少しずつ。
感覚が戻ることは、あなたが「今ここに生きている」証でもあります。
安心感を育てて、回復の土台をつくるステップ
① 安心できる人・時間・空間を増やす
「この人の前では無理しなくていい」「これをしている時が気持ちが落ち着く」「この場所にいると呼吸が楽になる」
──そんな安心できる存在を、少しずつでも増やしていくことが回復のカギです。
② 小さな体の感覚を味わう
足を湯船につける。好きな香りをかぐ。柔らかい布を触る。
それだけで、心と体のつながりは少し戻ってきます。
③ 神経系の「安心のルート」をつなぎ直す
ポリヴェーガル理論では、人が落ち着きを取り戻すには「社会交流系」が必要とされています。
つまり、安心できる人とのつながりが、脳の安心回路を再活性化してくれるのです。

解離からの回復を支えるカウンセリングという選択
当ルームのカウンセリングでは、「解離」という状態を丁寧に見つめ、その人が持っている回復の力(リソース)を育てていくことに重点を置いています。
過去の話を無理にする必要はありません。
大切なのは「今ここ」で、安心して過ごせる時間を少しずつ増やしていくこと。
そのプロセスをご一緒にサポートします。
自分を取り戻す旅の第一歩として
解離は、あなたが壊れたからではなく、「壊れないために必要だった防衛」なのです。
でも、もう一人で耐え続ける必要はありません。
あなたのペースで、少しずつ「つながり」を取り戻していけばいい。
そのための道のりを、カウンセリングで一緒に歩いていきませんか?
「今ここ」から、あなたの心と体をやさしくつなぎ直す旅、はじめてみましょう。
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気軽に読める内容なので、ちょっとした息抜きにどうぞ。
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