トラウマが生む不安からの解放 ─ 安心感を育てて心と体をゆるめる方法
トラウマからくる不安を解放し、安心を取り戻すには?
トラウマがあると、心に知らず知らず「不安」が住みつき、安心感が遠くなってしまいます。
家庭での安心不足が子ども時代に積み重なると、大人になっても神経系が過敏になり、ささいな出来事まで「危険」と察知してしまうのです。
でもご安心ください。この記事では、「トラウマからくる不安に振り回されず、心や体に安心感を育む方法」を、やさしい言葉でわかりやすくお伝えします。
トラウマと「家庭での安心不足」がどうつながるのか
不安が強い人の中には、「何が不安なのかはっきりしないけれど、いつも落ち着かない」という感覚を持つ方が少なくありません。
その背景には、幼少期の家庭環境が関係していることがあります。
たとえば、親の機嫌がいつも悪かったり、無視されたり、ちょっとしたことで怒鳴られたり。
そういった環境では、子どもは常に周囲を観察し、身を守るために緊張状態で過ごさなければなりません。
虐待などの明確なトラウマ体験がなくても、日常的な安心感の欠如は、神経系に大きな影響を与えます。
その結果、脳は「この世界は安心できない」と学習し、無意識に不安を抱える状態が続いてしまうのです。
幼少期の緊張が、神経系をどう過剰にしてしまうのか
人間の脳には、原始的な部分として「生命を守る」ための仕組みが備わっています。
たとえばジャングルで危険を察知したら、「逃げる」「闘う」「凍りつく」といった反応がすぐに起こるようになっています。
これは現代においても同じで、「安全ではない」と感じた瞬間、体は無意識に緊張し、呼吸が浅くなり、心拍数が上がります。
これが長期間続くと、心も体も常に休まらない状態になり、慢性的な不安を感じるようになります。
つまり、子どもの頃に安心できなかった人ほど、神経系が過敏になり、「今は安全」という判断がしにくくなってしまうのです。

【専門知識】ニューロセプションとは?無意識に「安全か危険か」を見ているメカニズム
「ニューロセプション」とは、ポリヴェーガル理論に基づく神経の働きで、「今この場所が安全かどうか」を無意識に判断する仕組みのことです。
たとえば、誰かと目が合ったときに「なんだか怖い」と感じることや、人混みの中で急に不安が強まること。
それらはニューロセプションが「危険」と判断して起こる反応です。
子ども時代に安心感が育たなかった場合、ニューロセプションは誤作動を起こしやすくなります。
つまり、安全な場所でも危険を察知してしまい、体は常に「逃げる」「闘う」「凍りつく」などの反応を繰り返してしまうのです。
不安は“悪いもの”?不安のポジティブな役割とそのバランス
「不安」は本来、私たちを守るために存在しています。
試験前に緊張したり、知らない場所で警戒したりするのは自然なこと。
不安があるからこそ、私たちは準備をし、失敗や危険から身を守ってこれたのです。
しかし、その不安が日常生活に支障をきたすほど強くなってしまうと、やがて心身が疲れきってしまいます。
大切なのは、不安を「なくそう」とするのではなく、「コントロールできるようになる」こと。
不安があるからこそ生き抜いてこられたことにも目を向けて、自分を責めずに見つめる姿勢が大切です。
神経過敏=体の感覚が鈍くなっているサインとは
意外かもしれませんが、神経が過敏な人ほど、体の感覚が鈍くなっていることがあります。
たとえば、「疲れているのに気づかない」「お腹が空いているのに食べられない」「リラックスしたいのに力が抜けない」など、体の声が聞こえにくくなるのです。
これは、常に「危険」に備えて神経が張りつめていることで、体の内側の感覚(内受容感覚)にアクセスしづらくなっているためです。
安心感を育てるためには、まずこの体の感覚を少しずつ取り戻すことが第一歩になります。
安心感を日常に育てるための3ステップワーク
① 安心できる人・空間とのつながりを大切にする
無理に社交的になる必要はありません。
ただ、「この人といるとホッとする」「この空間では安心できる」と感じられる瞬間を、自分の中で増やしていくことが大切です。
② 呼吸や体の感覚に意識を向ける
難しい瞑想をする必要はありません。
たとえば、深呼吸をする、お風呂にゆっくり浸かる、好きな香りをかぐなど、小さな行動から始めて、体とつながる感覚を養っていきましょう。
③ 生活習慣を見直す
寝不足、カフェインの摂りすぎ、食事の偏り、体の冷え。これらはすべて不安を強める原因になります。
体が整うと心も安定していきます。まずはできることから整えていきましょう。

ケーススタディ:30代女性の「安心習慣」導入からの変化ストーリー
Aさん(30代女性)は、いつも「自分が悪い」と感じてしまい、仕事でもプライベートでも気疲れが絶えませんでした。
カウンセリングで話を重ねる中で、幼少期に母親がいつも不機嫌だったこと、何をしても否定された記憶がよみがえりました。
Aさんはまず、「深呼吸を1日3回だけ意識してやってみる」という小さな習慣を取り入れました。
そして、安心できる友人と会う時間を大切にし、体を温める入浴や、心地よい音楽を聴く時間も少しずつ増やしていきました。
徐々にAさんは「不安に飲み込まれそうになることが減ってきた」と実感。
体の緊張も以前より和らぎ、心の中にも少しずつ「大丈夫」という感覚が芽生えてきました。
カウンセリングでできること:あなたのペースで安心感を育てる支援
不安の強い方にとって、「話すこと」自体が緊張のもとになることもあります。
ですから、無理に話す必要はありません。
今のあなたの感覚を大切にしながら、安心できるペースで進めていきます。
カウンセリングでは、「安心感を育てること」を中心に、神経系に働きかけるさまざまなワークをご用意しています。
トラウマの内容を詳細に語らなくても大丈夫です。
あなたの神経系が「安心」を思い出せるよう、寄り添いながらサポートいたします。
不安が減っていく自分に出会うために——最後に伝えたいこと
強い不安を抱えているあなたは、実はとても頑張り屋さんで、ずっと緊張の中を生きてきた方かもしれません。
安心できる環境や人と出会い、体の声に耳を傾けることを少しずつ続けていけば、あなたの神経系は必ず変わっていきます。
不安が消えなくても、「不安に振り回されない自分」になれるのです。
どうか、あなたがあなた自身に優しくなれますように。
そしてもし、ひとりでは難しいと感じたら——私が一緒に歩んでいきます。
安心して、まずは一度お話ししてみませんか?
もし長い記事が疲れるなと感じたら、エッセイカテゴリーに短めの文章もあります。
気軽に読める内容なので、ちょっとした息抜きにどうぞ。
あなたの心が軽くなる一言が見つかるかもしれません。エッセイはこちら