自然に笑える自分になるには?安心安全のサインと笑顔の秘密
笑顔でいる人は長生き?
「いつも笑顔でいる人は長生きする」
と聞いたことはありますか?
実はその考え方を裏づけるような研究が、
日本で行われています。
ただし、「笑顔でいれば寿命が延びる」という
単純な話ではありません。
本当に大切なのは、
“笑顔になれる心と体の状態”です。
この記事では、山形県の大規模研究をもとに、
「自然に笑顔でいられること」と
「心の安心感」との関係を、
トラウマケアの視点からやさしくお伝えします。
山形県の研究が示した「笑う頻度と健康リスク」
山形県で行われた17,000人以上を対象とする
調査では、「笑う頻度」と
「全死亡リスク・心血管疾患発症率」との関係が
調べられました。
結果はとても興味深いものでした。
「週1回以上笑う人」と比べて、
「月1回未満しか笑わない人」は、
全死亡リスクが約2倍(1.95倍)も
高かったのです。
心血管疾患の発症率も同様に高く、
笑いの少なさが健康状態と深く関係していることがわかりました。
とはいえ、研究者たちは「笑えば長生きできる」とは結論づけていません。
むしろ、「笑うことができる状態=心と体が健康である」という解釈のほうが自然です。
つまり、「笑顔でいられる人」は、
もともと体が安全で安心できる状態にある――
そう考えると、この研究結果がより深く
理解できます。
研究の詳細はこちらから確認できます。
「笑える状態」とは、神経が安全を感じているサイン
私たちが自然に笑ったり、表情がやわらぐのは、腹側迷走神経という神経が働いている
サインです。
この神経は、ポリヴェーガル理論でいう
「社会交流システム」を担う部分。
人と目を合わせたり、声のトーンを
柔らかくしたり、相手とつながりを感じるときに活性化します。
腹側迷走神経が働いているとき、
心拍は穏やかになり、呼吸も深くなり、
体はリラックスしています。
その状態では、顔の筋肉も自然にゆるみ、
穏やかな笑顔が出てきます。
一方で、過度なストレスや不安、
恐怖を感じているときには、
体が“防御モード”になります。
交感神経や背側迷走神経が優位になると、
表情はこわばり、声が小さくなり、
視線も固まります。
つまり、「笑顔でいられる」というのは、
体が“もう危険じゃない”と感じている証拠
なんです。
けれど、すべての笑顔が“安心”から
生まれるとは限りません。
なかには、心の奥では緊張しているのに、
周りに合わせたり、攻撃されないようにと
“笑顔を作る”人もいます。
その笑顔は、体が安全を装っているだけで、
本当の安心とは少し違うのです。
では、その「作り笑顔」は
どんな状態なのでしょうか。

攻撃されないための「作り笑顔」は、あなたを守ってきた証
私のクライアントさんの中にも、
「人に嫌われたくない」「怒らせたくない」と、
笑顔でいようと頑張ってきた方がいます。
たとえば、家族の中で
いつも誰かの機嫌を伺っていたり、
職場で空気を壊さないようにと
笑顔を絶やさなかったり。
そうやって“穏やかに見える自分”を保つことが、
生き延びるための方法だったのです。
「作り笑顔」は危険を察知した神経の働き
こうした笑顔は、腹側迷走神経(安心モード)
から生まれるものではありません。
むしろ、交感神経(緊張・警戒)や
背側迷走神経(凍りつき・あきらめ)が
優位になっている状態で、
「これ以上攻撃されないように」と、
体が自動的に安全を演じているんです。
つまり、「作り笑顔」は
体が危険を感じているサイン。
心では笑っていても、
体は休まっていない状態です。
それでも「守ってくれていた」笑顔
でもね、この笑顔を“悪いもの”として
責める必要はありません。
その笑顔は、過去の環境であなたが
身を守るために、体が覚えた
賢い生存戦略だったのです。
誰かが怒鳴ったり、否定的な態度をとったりするたびに、体は瞬時に「危険」と判断して、
その場を穏やかに保つための表情を作る。
そうやって、あなたはずっと自分を守ってきた。
それは「弱さ」ではなく、
むしろ「生き抜くための強さ」です。
無理して笑わなくても安全だと思える瞬間を増やす
大切なのは、
「もう無理して笑わなくても大丈夫」と
体が感じられる時間を、少しずつ
増やしていくこと。
それは特別なことじゃなく、
たとえば、
- ひとりでホッと息をつける静かな時間をもつ
- 優しい声や、温かいまなざしに触れる
- 自然の中で呼吸が深くなる感覚を味わう
- 信頼できる人の前で、少しだけ力を抜く
そういう小さな安心を、
日々の中に取り戻していくことなんです。
すると体は「もう守らなくても大丈夫」と
感じ始め、
表情筋が自然にゆるんでいきます。
そしてやがて、心からの笑顔(腹側迷走神経が働く笑顔)が、少しずつ戻ってくるのです。
「笑顔でいられること」は、安心して生きられている証
無理して笑うことは、もうしなくていい。
笑顔でいられるというのは、
「安心して自分でいられている」という
体のサイン。
だからこそ、笑顔を“つくる”のではなく、
笑顔が“こぼれてしまう”ような環境を、
あなた自身に与えてあげてほしいのです。
安心できる空間、人、時間。
その中でこそ、
ほんとうの笑顔は自然に生まれます。
笑顔が生まれる“安全な環境”を自分に与えよう
では、どうしたら自然な笑顔に
なれるのでしょうか?
それは、「笑おう」と努力することではなく、
心が安心できる環境をつくることから
始まります。
たとえば、
- 安心できる人と過ごす
- ひとりの時間を大切にする
- 自分を否定しない言葉を使う
- 心地よい音や香りに包まれる
- 自然の中をゆっくり歩く
- 信頼できるカウンセラーに話す
こうした時間の中で、体の緊張がゆるみ、
神経が「安全」と感じ始めます。
そしてそのとき、
自然と笑顔が戻ってくるのです。
笑顔は「努力の結果」ではなく、
心が安心したときの“副産物”。
だから、笑顔を目的にする必要はありません。
「笑えるようになる自分」を信じて、
安心できる環境を少しずつ整えていきましょう。

笑顔は「安心の証」
山形県の研究が示したように、
笑うことが多い人は、健康的に長生きしている
傾向があります。
けれど、それは「笑顔が寿命を延ばす」と
いうよりも、「安心して生きている人は笑顔が多い」ということ。
誰だって、不機嫌でいたいわけじゃありません。
でも、ずっと緊張していたり、怖さや不安を
感じていると、笑顔は出づらくなります。
それは“あなたが弱い”からではなく、
体があなたを守っているから。
無理に笑う必要なんてありません。
安心を感じられる時間や人とのつながりが
増えるほど、自然と笑顔は戻ってきます。
笑顔は作るものではなく、
心と体が安全を感じた瞬間にこぼれるもの
なのです。
カウンセリングのご案内
「笑いたいのに笑えない」
「表情がこわばってしまう」――そんなときは、
神経がまだ安心を感じられていないのかも
しれません。
トラウマや過緊張を抱える方の中には、
体がずっと“守りのモード”のままになっている
場合もあります。
カウンセリングでは、体と心の両面から
アプローチし、安心感を取り戻すサポートを
しています。
「自然な笑顔を取り戻したい」と感じる方は、
どうぞ一度ご相談ください。
あなたが本来持っている、
穏やかでやさしい笑顔が、
きっとまたあふれてきます。
もし長い記事が疲れるなと感じたら、
エッセイカテゴリーに短めの文章もあります。
気軽に読める内容なので、
ちょっとした息抜きにどうぞ。
あなたの心が軽くなる一言が
見つかるかもしれません。
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