あなたの心の弱さじゃない ― 依存から抜け出せない人の心理とは?
依存から抜け出せないのは「意志が弱いから」ではない
「やめたいのに、やめられない」
そんな思いで苦しんでいませんか?
スマホ、買い物、恋愛、ゲーム、甘いもの――。
あるいは、お酒、過食、自傷行為、薬物といった身体に負担をかける行為まで。
「依存」にはさまざまな形がありますが、その裏にはいつも、“やめられない苦しさ”がついてきます。
そして多くの人は、その苦しさを「自分の意志が弱いせいだ」と責めてしまうのです。
でも、本当にそうでしょうか?
依存から抜け出せない心理には、もっと深い心のメカニズムが隠れています。
今日はそのなかでも、「トラウマと依存」の関係について、やさしくお話ししていきますね。
「快楽のための依存」と「痛みを隠すための依存」
まず、依存行為には大きく分けて2つのパターンがあります。
- 快楽を求める依存
- トラウマを抑える依存
① 快楽を求める依存
これは比較的わかりやすいタイプで、脳の「報酬系」と呼ばれるシステムが関係しています。
スマホの通知、甘いスイーツ、買い物のワクワク感などで、一時的にドーパミン(快感を生む物質)が分泌され、またそれを求めてしまうという仕組みです。
これはある意味、自然なこと。
ただ、これが過度になり「日常生活に支障が出るレベル」になると、依存状態と見なされます。
そしてもう一つのタイプ――実はこっちの方が、もっと苦しい依存に発展しやすいのです。
② トラウマを抑えるための依存
このタイプの依存は、心の深い部分にある「過去の痛み」から目をそらすためのものです。
たとえば、
- 幼い頃に親から無視された
- 理不尽な暴力や言葉で傷つけられた
- 自分の気持ちを否定され続けた
- 愛される経験が乏しかった
こういった経験があると、人の心は“痛みから身を守る術”を自然に身につけようとします。
でも、その「守る術」が、依存行為だったりするのです。
感情を抑え込むための“避難所”としての依存
人は本当に辛い感情をそのまま感じることが難しいとき、それを「感じないようにする」機能を使います。
・泣きたいのに、泣けない
・怒っているのに、怒れない
・寂しいのに、平気なふりをする
そうして抑え込まれた感情は、いずれどこかで爆発してしまうか、または何かで“蓋”をし続けるしかなくなります。
その蓋の役割を果たしているのが、依存行為だったりします。
- 飲酒で感情を鈍らせる
- 過食で満たされない心を一瞬だけ埋める
- 自傷で「生きている感覚」を得ようとする
これは決して、「悪いことをしている」わけではありません。
ただ、その方法しか知らなかったのです。

なぜ「やめよう」としても、やめられないのか
私たちは「やめたい」と思えば、やめられると信じがちです。
でも、依存行為が心を守ってくれていた手段だったとしたら?
ただやみくもに「やめなきゃ」と思っても、心の深い部分では「それをやめたら、壊れてしまう」と感じてしまうのです。
だから、やめられなくて当然なのです。
意志の弱さなんて、関係ないのです。
依存の裏にある「未完了の感情」
依存を手放すためには、行為そのものではなく、その奥にある感情に気づいていく必要があります。
たとえば、
- 「わたしは一人ぼっちだった」
- 「本当は愛されたかった」
- 「怖くて仕方なかった」
- 「あんな風に扱われるなんて、本当はつらかった」
こういった感情は、あまりにも重くて、一人で感じるには大きすぎることが多いです。
だからこそ、誰かの助けが必要になるのです。
自分を責める前に、立ち止まってみて
依存から抜けられないあなたが、もし「自分がダメだから」と責めているとしたら。
ちょっとだけ立ち止まって、こんな風に考えてみてください。
「私は、あのときの痛みに今も耐えている」
「だからこそ、心は依存という方法で私を守ろうとした」
自分を責めることよりも、自分を理解することから始めていいのです。

依存を必要としない「安心な心」へ
依存をしている自分を否定する必要はありません。
その行為があったからこそ、今までどうにか生き延びてこれたのですから。
でも、いつまでもそこに頼らなくてもよくなる日が、必ずやってきます。
そのためには、
- 心の仕組みを知ること
- 感情を丁寧にほどいていくこと
- 自分にやさしく向き合っていくこと
このプロセスがとても大切です。
カウンセリングという「安全な場」でできること
もしあなたが、
「やめたいのに、やめられない」
「依存している自分をもう終わらせたい」
そう感じているなら――
まずは、心の中にある「傷ついた過去」に少しだけ目を向けてみませんか?
カウンセリングでは、依存行為を無理にやめさせることはしません。
それよりも、あなたの心がなぜその行動を必要としているのかを、一緒に見ていきます。
丁寧に、やさしく、安心できるペースで。
あなたの心に寄り添いながら、依存の奥にある感情を一つずつ癒していくこと。
それが、わたしのカウンセリングで大切にしていることです。
依存の奥にある本当のあなたに出会い、自分を信じられるようになったとき――
もう、その行動をしなくても、心はちゃんと落ち着いてくれるようになりますよ。
おわりに
依存は敵ではありません。
あなたの心が、あの時そうするしかなかった、大切な「守り方」だったのです。
でもこれからは、少しずつでも「守られる方法」を変えていけるかもしれません。
カウンセリングは、そのお手伝いができます。
あなたの心がやっと安心できる場所で、自分を取り戻す時間を、共に過ごせたらと思います。
もし長い記事が疲れるなと感じたら、エッセイカテゴリーに短めの文章もあります。
気軽に読める内容なので、ちょっとした息抜きにどうぞ。
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