生きづらさを生む自分との付き合い方
私たちは「心は一つ」と考えがちですが、実はそうではありません。
私たちの心には複数の「私」が存在します。
「人前でニコニコ愛想よくふるまう私」もいれば、
「職場でマイペースな人にイライラする私」もいます。
「他人の前で良い母親を演じる私」もいれば、
「家に帰ると子供に八つ当たりしてしまう私」もいます。
そして「本当の私」がなんなのかわからなくなり、苦しむのです。
これは「心は一つ」だと考えるからこそ起こる矛盾です。
そうではなく、心の中には「色んな私」がいるんです。
そしてどんな私にも、ちゃんと役割があります。
人前でニコニコ愛想よくふるまうことによって、社会生活を円滑に行えていると言えます。
マイペースな人にイライラするということは、自分自身にマイペースでいることを許さず、自分を厳しく律することで今日まで生き抜いてきたとも言えます。
他人の前で良い母親を演じることで、他人からの称賛を得て自分の価値を高めているとも言えます。
家で子供に八つ当たりしてしまうのは、傷ついたままの自分の中の子供の部分が反応しているので、自分の中の子供の部分を守っているとも言えます。

心は一つだと考えるから矛盾に苦しみますが、心の中には沢山の私がいて、それが一見良くないような働きをしていたとしても、ちゃんとそれぞれに役割があり、その役割を全うしているだけだと考えると矛盾しません。
できればイライラしたり、人と比べて落ち込んだり、偽りの自分を演じて称賛を得ようとしたりする自分がいなければいいと思うからもしれませんが、これらの自分も今まで生きてくる中で必要だったために生まれています。
過去の傷つき体験で、もうこれ以上傷つかないようにするため、心を守るために他人に厳しかったり、自分に厳しかったりする「私」が生まれたのです。
生きづらさは、この沢山の「私」たちがお互い連携せずに、それぞれ勝手に自分の役割を果たそうとしているところから来ています。

誰でもが生まれながらに思いやりや、好奇心、勇気や創造性といった要素を心の中に持っています。
しかし、成長するにつれ様々な傷つき体験が、沢山の防衛的な「私」を作り出してしまうのです。
自分を守るために怒りっぽかったり、落ち込みやすい「私」が前面に出てしまい、生まれ持った思いやりにあふれた「私」が後ろに下がってしまうのです。
しかし、防衛的な「私」の労をねぎらい、今までの役割に感謝し、これからは生まれながらの思いやりのある「私」をサポートしてもらうようお願いすると、他の沢山の「私」たちは連携するようになります。
今まで嫌いな自分を見ないようにしてきたり、なかったもののように扱ったりしてきませんでしたか?
いくら見ないようにしても、あるものをないものにはできません。
無視し続ければし続けるほど、ますます「私」は孤立し極端な行動に出ます。
どんな「私」にも役割があると知り、うまく協力し合っていくのが生きやすくなるコツです。

心の中も他人との付き合いと同じです。
嫌ったり無視したりしている限り、仲良くはなれません。
あなたの中にはどんな「私」がいるでしょうか?
カウンセリングでは、心の中の沢山の「私」と仲良くなれるようサポートしています。